第60回 ピロリ菌
2013.10.30 - [病気]
■ピロリ菌とは
ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌で、胃炎や胃潰瘍などの胃の病気の原因になります。胃には胃酸があるため通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌の持っている酵素が胃酸を中和し身を守ることができます。
ピロリ菌に感染すると胃に炎症が起こりますが、この時点ではほとんどの人は自覚症状がありません。さらに感染が続くと感染範囲が広がって慢性胃炎が進みます。この慢性胃炎が胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどを引き起こす恐れがあることが明らかになってきました。
■ピロリ菌の感染経路
感染経路ははっきりわかっていませんが、口からの感染が大部分であろうと考えられています。ピロリ菌の感染率は幼少期の環境衛生と関係していると考えられており、上下水道が十分普及していなかった50歳以上の世代で高い感染率となっています。生活環境が整備された現代の日本では生水を飲んで感染することはありませんし、コップの回し飲みなど日常生活でも感染しないと考えられています。
ピロリ菌が感染しやすいのは免疫力の弱い5歳以下の幼児期と言われています。そのためピロリ菌に感染している大人から噛み砕いた食べ物を幼児に口移しで与えるといった行為ではピロリ菌を感染させる可能性があります。しかし親から子どもに対するキスでは感染する可能性は低いと言われています。
■予防方法
予防する方法はよくわかっていません。しかし、衛生環境の整った現代では若い世代の感染率は急速に低下しています。そのため大人になってから感染することはほとんどないと考えられていますが、感染の可能性がある大人から幼児への口移しは避けるようにしましょう。
■検査・除菌
ピロリ菌の検査には内視鏡を使う方法と、血液や尿・便・呼気などを採取して調べる内視鏡を使わない方法があります。ピロリ菌が見つかった場合、薬を服用し除菌します。ほとんどのピロリ菌感染者は症状もなく、健康に暮らしていますが、ピロリ菌に関連する疾患の治療や予防の為にも除菌療法が必要かどうかは医師とよく相談するのがよいでしょう。
また、一部のヨーグルトも100%の除菌にまでは至らないことがあるとも捉えられますが、菌を減少させるには高い効果が期待でき、除菌もできます。
胃の痛み・不快感が続いている、市販薬を飲んでも治らないなどという方はまず医療機関を受診し、胃の状態を調べてもらいましょう。