第66回 高齢化社会と認知症治療
2014.4.18 - [病気]
日本では4人に1人が65歳以上という、超高齢化が進んでいます。
高齢化とともに増加のみられる認知症については医学的な研究も進み、薬物療法によって進行を遅らせたり、症状の改善が可能になってきています。
早期発見・早期治療のためにも、身近にいる人がちょっとした変化に気づいて専門医の受診へ導く必要があります。
■認知症を疑うきっかけ
家族や身近な人が気づく変化として
・同じ話、同じ行動を何度も繰り返すようになった
・身なりに気をつかわなくなった
・怒りっぽくなった
・慣れているはずの行動ができなくなった
・会計の時に小銭を出さなくなった
・薬の飲み忘れや飲み間違いが目立つようになった
・物の置き場所がわからなくなった
などがあります。
■専門医へ受診
認知症の専門医がいるのは、病院の診療科でいうと「精神科」や「神経内科」、「物忘れ外来」などです。近所にかかりつけ医がいる場合はまずは相談し、必要と判断された場合は専門医を紹介してもらうとよいでしょう。
■薬物治療
・アルツハイマー病治療薬・・・根本的な治療はできませんが、知能の衰えを一時的に改善したり、病気の進行を遅らせることができます。
・向精神薬・・・幻覚、妄想、興奮、暴力などはケアを工夫することで治すことが可能です。それでもどうしても症状の改善がみられないときは、介護者の負担を軽くするためにも医師に向精神薬の処方を相談することも大切です。ただ、症状がおさまったら向精神薬の長期服用せず、ケアの工夫に切り替える必要があります。
■リハビリ治療
・回想法・・・懐かしい昔を思い出し話すことで、脳が刺激されます。認知症のお年寄りにはできるだけ幼いころのことや若い時のことを話してもらう機会をつくりましょう。
・音楽療法・・・歌で記憶が掘り起こされ、記憶を呼び起こす効果が期待できます。
また、歌うときに腹筋を使うことで代謝を活発にし、筋力エネルギーを増やす効果も期待できます。
■美術療法
絵画などのアート作品を制作することで神経細胞を刺激し、活性化する療法です。
アルツハイマー型認知症になると物の形や空間の認識が困難となるので、絵を描くというプロセス自体が脳のリハビリとなります。
■最後に
認知症の人は、今聞いたことや話したこと、行動したことなどをすぐに忘れてしまいます。
家族は認知症の人の行動に振り回され、理解しようとしてもどうしてもイライラしてしまうこともあると思います。これまで一緒に積み重ねてきた楽しい時間を、人生の最期だからこそ家族と笑って過ごしてほしい。そのためにも家族だけで抱え込もうとせず、早めの対応で地域や福祉サービスをうまく活用し、社会全体で認知症高齢者のケアをしていきましょう。